
先日、地元沼津で「産学連絡協議会」IULA(Industry-University Liaison Association)企画の「ル・マン24時間レース挑戦と新しい工学教育」の講演を聴いてきた。
「ルマン」と言えば車に興味のない人でも知っているし、映画ファンならスティーブマクィーン主演、Porsche917K、Ferrari512S登場の「栄光のルマン」でも有名。
車ファンなら、ご存知世界三大レースの一つで24時間耐久レースとしてお馴染みだ。
http://www.u-tokai.ac.jp/lemans/index.html
http://www.lemans.org/24heuresdumans/2008/pages/accueil_gb.html
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9E%97%E7%BE%A9%E6%AD%A3
レース、エンジン
世界のビッグメーカーでも勝利するのは至難のこのレースに、大学チームで出場するという驚きの挑戦。一発で出場を決め、且つ18時間を走り切ったというのだからすごい!
現代のモータースポーツはF1を頂点に多額の資金が必要なことは常識で、F1トップチームの予算は年450~460億円、下位でも100億円近い資金が必要と言われている。残念ながらチームアグリが撤退したのも資金の限界からだ。
カテゴリーが違い、単独レースであるものの総額1億円ぐらいでルマン参戦したとのこと!!
講演の「林 義正」教授は日産自動車で長年レーシングエンジンを開発してきた有名エンジニア。日産時代のVRH35Zエンジンは常勝の最強エンジンと言われ、R92CP、R390等のレーシングマシンに搭載された。
今回この参戦のために山形「YGK」社で開発された「YR40」エンジンの基本設計・監修を林先生が行い、VRH35の1/3程度のコストで開発されたらしい。
エンジン、シャシー等の開発プロセス、技術の説明がCADも使って説明され、現地ルマンでのレース前、レース中の様子もビデオで紹介された。
この大レースに実際に参加している学生の姿を見ると感動的だ。18時間弱のリタイアする時にオフィシャルの書類にサインする林先生の姿と、ピットで涙を流す学生の映像には見ている側にもうっ!と来た。
ところで、最近の技術の説明の際、前後左右上下の加速度計のデータを2回積分するとコースの絵がまったく綺麗に描けるというのは目から鱗だった。
人材育成
今回のプロジェクトは研究・技術開発が基礎にあるが、人材育成を行うのは大学も企業も同じ。
産学共同という言葉は日本各地で語られるものの、実際は実っているのは極く少数だろう。
そもそも企業側と学校側の狙いは違う、そこにはお互いの利害を開示しないと形だけのものに終わり、きれいごとは限界があると思う。企業側は新技術開発の果実が欲しいし、優秀な学生の確保もしたい。学校側は先端市場の動向、プロの世界で通用するような学生を育て、企業に多くを送り込みたい。
このお互いのギャップを埋めるための、今回のプロジャクトは学生を一気にプロの最難関計画に放り込んだわけだ、やたらに時間をかけることはお互い限界があるし、なんといっても「ルマン」は世界中で知られているから、学校、企業双方に絶好の宣伝場所だ。
うまくいけば1億どころの効果ではない。まあ、参加しただけで脅威の効果だろう。
林先生は企業での大きな難しいプロジェクトの推進者だったから、しっかり計算ずくのはず。今の若い人達はなかなか行動に移らないが、一旦興味を示すと意外な力を発揮するもの。極端に難しいプロの世界を見せ、高い目標設定をして意識変革を図り、モチベーションを高めるという実体験に基づく人材育成策だと思う。
こんなことも自分達は出来るという成功体験の効果は非常に大きく、また受け継がれていくだろう。4年で卒業してしまう大学生に技術を伝承してレベルアップし続けるのは大変難しいものだが、先生は体験とマニュアル化を進めたと説明されていた。
優れた技術と製品というのは無駄なく美しいもの。古い日本建築、刀剣、家具、車・・・皆同じだ。
また、感性・センスが重要だと言っておられた。これに経験を積み、成功体験が加われば自ら行動できるようになるのだろう。先生のチームの生徒は来客があればすぐ案内し、仲間が困っていれば無駄なく助けるようになってきているとのこと。
もう一つ、先生ならではのユニークなお話。時々エロも・・と仰っていた。
女性(異性)とつきあうことは重要で、一生かかっても理解できえない相手は女性で、これは異文化・自分と違う異質なものを取り入れることに繋がるとのこと。
なるほど確かにそうだ。
ついでに企業人の時代の経験からだと思うが、「0.9理論」?を説明されていた。
異質な考え、意見を述べると排除されるというのはサラリーマン世界ではしばしば見られる現象。1の能力の人が自分を凌駕しない0.9の能力の人しか受け入れず、1×0.9×0.9・・・はゼロになって衰退していくというお話。これまたしかり、異質を受け入れる、相手の話をよく聞くというのはやはり大事なことだ。
こうした育成の結果、当初の学生の就職状況は惨憺たる実績だったらしいが、今では単一学科での自動車会社就職率NO1で、日産、ホンダ等への就職がどんどん決まっていて、採用先でも即戦力として活躍しているらしい。
まったく同感と思わせられるお話で、大変面白かった。
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