和食のこころ(1)

そば、おにぎり、味噌汁、お茶漬け、漬物、海苔、豆腐、味噌、醤油、塩、酢、日本酒、わさび、昆布、焼魚、煮魚、干物・・これらの食とその素材は日本人には日頃馴染みのものだ。
近年、日本食(和食)は健康志向で世界的な関心が高まっているが、単に健康志向というだけではなく、そのこころ・文化への関心も高いようだ。
○清貧の美学
先日、日経新聞の夕刊にフランス文学者の「鹿島茂」氏が「ソバかラーメンか」という文を寄稿していた。ソバ的ベクトルとラーメン的ベクトルがあり、ソバは「制限的、禁欲的」であるのに対し、ラーメンは「外延的」で無限の変容が可能で、「歌舞伎、日光東照宮、マンガ、アニメ」等がその例としていた。ふ~~むなるほどと妙に納得した次第。
ラーメンの無限の可能性は多彩なラーメン店合戦のとおりだし、そばの「制限的、禁欲的」の表現は「ソバ職人」に見られるように日本文化の特徴、背景をよく表している。
「そばとラーメン」「わさびと胡椒」「日本刀と青龍刀」「銀閣と故宮」「白黒写真とカラー写真」というのは安易な対比だが、「そば、日本刀、銀閣」は素材を突き詰め、無駄を廃し、職人芸によって昇華させた「禁欲的」日本文化そのものだ。
日本の文化と食は中国から仏教の伝来と共にもたらされたものが多いが、その後、禅宗、武士道、茶道等の持つ厳格で禁欲的な精神が食にも一体となり及んでいる。
銀閣の黒い屋根と白い壁なんて「おにぎりと海苔」か?因みに中国文化の喜怒哀楽と多彩な色合いの世界観は「エビチリの赤」?
○発酵と吸収
和の食材は人手により農作物を丹精込めて育て、素材そのものを味わう「米、漬物、豆腐、海苔」等と、素材に発酵技術を使った「味噌、醤油、日本酒、酢」等の調味食品がある。
微生物の活動である発酵は糖分・タンパク質・アミノ酸等の分解であり、腐敗と同様なプロセスだが、人間にとって有益か毒かを長年の経験で選り分けてきたものだ。
最近歳のせいかステーキとかハンバーグなんかを食べた後はどうも胃が重い。その点、和食は体に良いというのは感覚的にも実感できる。
米、海苔、味噌、塩、豆、菜、魚、酒等の和の素材は、その素の栄養素・エネルギーが原始的な体の欲求を呼び起こす気がする。菜食の比率が高く、蛋白質は魚、油は植物油か魚油を使い、複雑で脂質の多い食材でないため、体への抵抗が少なく負荷が掛からず吸収できるように思う。
日本文化の素の追求、厳格で禁欲的な職人技は凛とした和食作品を作り上げ、結果、脂肪を削ぎ落とした痩躯の日本人の体を作るのだろう。
魚沼産こしひかりを大森の海苔で巻いたほかほかのおにぎり、諏訪辺りの赤味噌の少し濃い目の味噌汁、たまり漬か千枚漬け、沼津のふっくらさば一夜干しか厚手のあじの開き、これに冷やした大月の「さ々一」か諏訪の「翠露」の生酒一合なんてのは最高だ。
まあ、そう言いながらも熱いラーメンをすすりながら、焼きおにぎりを頬ばるのも悪くないが。
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