車の懐メロ(6)スポーツカーの発売
1950年代後半から次第に国産車の販売が開始され、60年代に入るとブルーバード 、コロナ等次々に新たな乗用車が発売されてきた。
驚くことに早くもこの時期にスポーツカーも次々に世に出てきている。ダットサンフェアレディー1500(SP310,1962)、ホンダS500(1963、後S600,800)、トヨタS800(1965)等である。
60年代早々に発売されたということは50年代後半から開発が進んでいたはずで、戦後の経済復興の途上でも既にスポーツカー作りに情熱を燃やした人達がいたわけである。
●ダットサンフェアレディー1500(SP310)
1960年には初代と言える北米向けの車があったらしいが、国内ではこのフェアレディー1500が実質初代。
トラックのシャシーをベースに開発され、量感・全体のフォルムも綺麗で斬新なオープンのスポーツカーだった。当初の排気量1,500CCから1,600CC、2,000CCと順次拡大され、1969年にフェアレディーZが発売されて道を譲った。
発売直ぐの1963年の第1回日本グランプリでクラス優勝したらしいが、私の記憶にあるのは第2回からだ。古い4気筒エンジンで60年代を生き抜いた豪快なスポーツカーで、北米他海外でも有名な存在。
●ホンダS500、600、800
ホンダのSとトヨタのSは対照的な存在。
ホンダは当時2輪のみのメーカーで新たに4輪を手がけたのだが、最初からスポーツカーというのがホンダらしい。当初は360CCと500CCの二つのエンジンでスタートしたが、最終的には500CCで発売となる。1年程で直ぐ600CC、また800CCへと順次排気量拡大された。ほぼ同時期にT360という同じエンジンを積んだトラック!が発売された。水冷4気筒DOHC8,500rpmエンジンとはホンダならではだが、ホンダの2輪販売店の店先で御神楽みたいな青いボディーに白くてでっかいHマークの車体をよく見かけた。
ホンダは2輪で鍛えた高回転エンジンで、アルミの水冷直列4気筒DOHC、4連キャブのハイテクマシーン。チェーンドライブという後輪をシャフトではなくチェーンで駆動するという2輪メーカーならではの設計。当時でもそんなことが可能なのかと驚いた。本田宗一郎の常識破りの思想が全面に出ていた時代だ。
S500 531CC、44馬力/8000rpm、675kg、
S600 606CC 57馬力/8500rpm、695kg
S800 791CC 70馬力/8000rpm、755kg
非常にコンパクトな車体ながらもハイテクの固まりのようなほれぼれさせるようなエンジンが美しかった。今でも所有欲をそそる車だ。
●トヨタスポーツ800
高回転・高出力エンジンのホンダに対して、非力な空冷エンジンながら軽量・空力ボディーで対抗したのがトヨタスポーツ800。パブリカ用の空冷OHV2気筒800cc、45馬力のエンジンながら、航空機技術を活用した水滴型軽量ボディー(580kg)で高い競争力を発揮した。
この2台はレースシーンでのライバルで、実力は伯仲していて互角に渡り合った。
故「浮谷東次郎」のトヨタS800と「生沢徹」のホンダS600の船橋サーキットでの戦いは伝説化している。話によると浮谷は生沢のスピンに巻き込まれ車体損傷し、大きく後退しながらも鬼神のごとき追い上げでついに生沢を捉え優勝してしまったという逸話で、後に練習中に事故死してしまった天才浮谷東次郎と共に語り継がれている。多くのレースシーンでこの2台の戦いが展開されたが、“エスロク、エスハチ”(ホンダ)と“ヨタハチ”(トヨタ)の愛称で呼ばれ、エスハチと共にやはり乗ってみたかった車。
その他、60年代半ばから次々にスポーツカー、スポーティーセダンが発売されてきた。
①いすゞベレットGT(1964)、②プリンススカイライン2000GT S54B(1965)、③日産シルビア(1965)、④トヨタ2000GT(1965)、⑤マツダコスモスポーツ(1967)、⑥いすゞ117クーペ(1968)
①ベレGは当時ユーミンの「コバルトアワー」の歌詞にも登場し、スカGと共に若者の憧れの車だった。
②スカGは第2回日本グランプリでの生沢がポルシェ904とのバトルで一躍有名に。その後のGTA、GTBとして販売され伝説となる。
③シルビアはフェアレディーの車台に、国内では知られていなかった独系アメリカ人アルブレヒトゲルツデザインのボディーで登場。削り取ったようなシャープな面が美しい気品ある車。
④トヨタがヤマハと共同で開発した本格的スポーツカー。イタリア等ヨーロッパのデザインに負けない美しさで、日本でもこんなものが出来るのかと驚いた。また、007シリーズ「007は二度死ぬ」(1967)にオープンボディの2000GTが起用された。女優若林映子(あきこ)、浜美枝がボンドガールとして出演。浜美枝はバスガール!からボンドガール!になった逸話の持ち主。これまた日本人もボンドガールになるのかと驚いた。今は環境・農業・食料問題等に造詣が深く、田舎暮らしの美しい熟年生活を送っている。
⑤コスモは事実上の世界初の実用ロータリーエンジン車、既存の車の形と異なる宇宙船のようなイメージの斬新さだった。
⑥117クーペは彼の伊ジュージアーロのデザイン、フローリアンのクーペ版として開発されたが全く別物の美しさ。大学時代の先輩が所有していて何度か乗った記憶がある。
この時代は「ベトナム戦争、首都高速開通、鈴鹿サーキット完成、ケネディ暗殺、公害問題、新幹線開通、東京オリンピック、霞ヶ関ビル完成、3億円事件、BEATLES来日、アポロ11月面着陸・・・」日本(世界も)が最も急激に発展した時期で、工業・経済・文化等あらゆる面で活気に溢れていた。車に興味を持たない現代の若者世代に比較して、この時期に青春時代を過ごした我々には懐かしい時代だが、年齢を感じながらも我家の息子達も含めこれからの若者世代がどうなるのかが心配だ。
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